小國寡民。使有什伯之器而不用。使民重死而不遠徙。雖有舟轝、無所乘之。雖有甲兵、無所陳之。使民復結繩而用之。甘其食、美其服、安其居、樂其俗。鄰國相望、雞狗之聲相聞、民至老死、不相往來。
小國寡民。什伯の器あるも用ひざらしむ。民をして死を重んじて遠く徙らざらしむ。舟轝有りと雖も、之に乘る所無し。甲兵有りと雖も、之を陳ずる所無し。民をして復結縄して之を用ひしむ。其の食を甘しとし、其の服を美とし、其の居に安んじ、其の俗を樂しむ。鄰國相望み、雞狗の聲相聞ゆるも、民は老死に至るまで、相往来せず。
- 什=(十)十。
- 伯=(佰)百。
- 什伯の器=通の人の十倍・百倍の器量。兵器。さまざまな文明の利器。
- 舟轝=舟や乗車。
- 甲兵=甲や兵器。
- 陳=ならべる。
- 結縄=古代、まだ文字のなかったころ、縄をさまざまに結んで文字に代え記憶の便に供した。
- 雞=(鶏)にわとり。とり。
- 狗=いぬ。