『老子』では、幸せに生きるための宝のような教えが、第1章から第81章にわたって随所に散りばめられている。全部読むと大変だが、結局のところ宝は3つ。
我に三寳有り。持して之を寳とす。一に曰く慈、二に曰く儉、三に曰く敢て天下の先を爲さず。
『老子道徳経』第67章:三寳
ひとつめは慈。いつくしみ、相手を自分のようにして思いやる心。
二つめは儉=倹。無駄を省き、倹約すること。ここまでは、ありがちだが、次が『老子』らしい。
三つめは、敢えて天下の先を為さず。他人に先んじて活躍しすぎないということ。ついつい他人と比較して、競争して、自分が勝ちたい、先んじたいという気持ちは、誰しもが心の中に持ち得る。そして勝つために頑張るが、その結果、本当に良かったのか。仕事がうまくいって大会社の社長になる、厳しいトレーニングに耐えてオリンピックで金メダルを取る、芸能界で活躍して有名人になるなど、成功してしまったからこそ大変な目あってしまい、生きづらくなってしまうことはないのだろうか。何事も投げやりになれということではないが、敢えて勝つことを目指さず、他人に先んじていないことこそ、生まれ持った宝のひとつであることを『老子』は示している。
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